第一部:株式会社ブルックスホールディングス
代表取締役社長 小川 裕子 氏

ブルックスグループ(本社:横浜市)は、コーヒー、紅茶などの各種飲料、食品などを自社製造し、通信販売を行っています。

特にドリップバッグコーヒーのリーディングカンパニーとして有名ですが、ブルックスグループのそもそもの始まりは江戸時代の天保元年(1830年)にまで遡ります。初代が穀物取引をはじめ、2代目がさらに事業を拡張。今の埼玉県春日部市に広大な土地を所有し、不動産業で大きな財を成します。

ところが、3代目の時代に家業は没落します。小川家を再興したのは4代目の妻。現在の小川社長の祖母にあたる人物です。

この方がお茶と乾物の小売りを開業。5代目の父がとレギュラーコーヒーの全国販売へシフト、ドリップバッグコーヒーを広め、今のブルックスグループの発展につなげました。そして小川裕子様は6代目として2012年にブルックスホールディングスの代表に就かれます。まさに壮大な小川家のファミリーヒストリーです。

はじめは社長になるつもりは全くなかった小川様が社長になることを決断し、承継した事業の方向性を決めるにあたっては、様々な人々や小川社長自身の体験、そして5代目の父の言葉が大きな影響を与えたと言います。

そして、ブルックスグループのロゴに書かれた「おいしさのその先へ」を実践するために6代目が取り組んでいるテーマが「未病」。「未病」とは「健康でも病気でもない状態」を言い、心身の状態を「健康か病気か」といった明確に2つに分けられるものとして捉えるのではなく、健康と病気の間で連続的に変化するものとして捉える概念です。

具体的な新事業としては、2018年に神奈川県・大井町と三者協定により未病改善施設「未病バレーBIOTOPIA」を開設し、健康長寿を目指す事業運営に取り組みながら、未病関連商品の更なる開発事業とその充実に努めています。

講演の最後には、次世代に伝えたいこととして、

  • 引き出しをなるべく多く作ろう (自由な発想・無駄も大切)
  • 己の限界と隣人の限界を知ろう
  • 代表者に反対してくれる腹心をつくる
  • 国語(ことば)と算数(勘定)のセンスを磨く

など、いくつかの貴重な教訓を披露していただきました。

第二部:世界情勢に翻弄される日本の伝統食品
岐阜大学応用生物科学部 准教授 山根京子 氏

第2部の「ビジネスよもやま話」は講師に岐阜大学応用生物科学部の山根京子准教授をお招きし、日本の伝統食品ワサビの話を伺いました。

山根先生が、日本のワサビは日本固有の植物であることを証明するために、ワサビにそっくりの中国の植物の調査に中国・雲南省へ調査に行った時のエピソードや日本のワサビに対しての韓国のトウガラシとの比較研究から食文化という視点から、なぜワサビは日本でのみ長い間利用されてきたのか?についての考察を伺いました。

つぎに経済とワサビの関係について、バブル期、その後の低迷期の株価や物価との相関、あるいは北朝鮮のミサイル発射や、東北大震災、コロナ禍、といった世界情勢や自然・社会現象に翻弄されるワサビの姿を、山根先生独自のデータを使って明らかにされました。

講演の最後は地球温暖化の影響によるワサビ栽培の危機について述べられ、資源も文化も環境も守っていくことの大切さを訴えられました。
今月は「食」をテーマに、多様な視点から考えさせられたふたつの講演でした。

講師紹介

小川裕子氏

[横浜市]
株式会社ブルックスホールディングス
代表取締役社長 小川 裕子 氏

ブルックスホールディングスは、コーヒー、紅茶などの各種飲料、食品などを自社製造し、通信販売を行っている。特にドリップパックコーヒーのリーディングカンパニーとして有名。

事業の始まりは、約50年前に茶類・乾物の卸売業を東京都・築地で設立したことに遡るが、創業天保元年というブルックスグループの六代目として2008年に株式会社ブルックスの代表取締役社長に就任。

2012年よりグループ統括企業である株式会社ブルックスホールディングスの代表取締役社長を務める。 主事業であるコーヒーの直貿・自家焙煎による全国通販事業に加え、2018年に神奈川県・大井町と三者協定により未病改善施設「未病バレーBIOTOPIA」を開設。健康長寿を目指す事業運営に取り組みながら、未病関連商品の更なる開発事業とその充実に努めている。