
2025年のMARKファミリービジネス研究会の第2回を5月14日に開催しました。
5月のテーマは「”眠り”から生まれるもの」です。
事業承継、企業成長
第一部:株式会社ナンガ(滋賀県米原市)
代表取締役 横田 智之 氏

第1部の講師は 株式会社ナンガ 代表取締役社長横田智之様です。
講演の演題は『事業承継と企業成長』。MARKファミリービジネス研究会にピッタリのテーマです。
ナンガの主力製品は、品質やデザイン性に優れたダウンジャケットや寝袋などで、アウトドア分野では大変よく知られた会社です。滋賀県米原市に本社があり、会社の歴史は横田社長の祖父が地元特産の近江真綿を使って始めた布団製造が始まりです。その後2代目にあたる父が布団づくりのノウハウを活用して寝袋製造に転じ、アウトドア市場に参入しました。
そして3代目となる現・横田社長ですが、学生時代は獣医になることが夢でした。しかし夢がかなわず家業を継ぐことを決心します。話は前後しますが、横田社長の経営の基本は目標を決めて、その実現のために十分な下準備をすることにあるように思います。家業を継ぐにあたってもそうでした。アトツギとなることを決めた横田社長は、父親が昔ながらの職人気質で、営業は不得手だったため、自分は営業力をつけようとブライダル衣装のレンタル会社の営業職に就きます。またその会社は家族経営の会社であったため、親子間の軋轢など、家族経営の実態や問題点も目の当たりにし、自分の経営に活かせると考えたそうです。
その後2001年に、当時売上高7000万円、従業員10名だったナンガに入社。専門知識もないまま300万円分の寝袋を車に積んで全国のアウトドア店を営業に回るなどしながら、取引先など社外の人から様々なアドバイスを貰い学んでいきます。そして新たな挑戦としてダウンジャケットの製造を手掛けます。
当時、ユニクロの廉価のフリースがブームを呼んでいましたが、業界ではフリースに代わるもので、その上をいく価格帯のダウンジャケットが注目されていました。ダウンジャケットはナンガが持つ布団や寝袋の製造に必要な経営資源を利用でき、リスクを抑えられると考えたからです。幸い大手アパレルから600着のダウンウェアのOEMを受注します。
しかし当時のナンガはノウハウ不足で、納期が遅れ赤字に終わります。その後間もなく3代目社長に就任し、正式に事業承継をしますが、自社ブランドの製品の生産を目標にしていた横田社長は、薄利のOEMだが、大手のノウハウや学びを得られ、次に飛躍するための下準備だと考え、売上が10億円を超えるまではOEMを続けることとしました。
そうするうちに「NANGA」のブランド名が使える大手セレクトショップとのコラボ製品を開発するなど、ブランドの認知が広がります。横田社長はブランド価値とは、より良いものを作り続けることではなく、より適正なものを、お客様が自分たちの考える適正な価格より、ちょっと上の価格でお客様に納得して買ってもらえることだと言います。それには製品の何が良いのかの根拠を示すことが大事で、そのために自社に研究機関も作りました。
そして現在ナンガの売上は10年前の10倍以上の56億円、従業員も177名にまで増えました。売上構成も2016年に売り上げの8割弱を占めていたOEMの割合が、売上げが増えるにつれ2020年には6割以下となり自社ブランドの製品の割合が飛躍的に増えています。

そうなると次の目標はグローバル展開です。そのためには足し算で成果を上げるのではなく、掛け算で大きくする人が必要だと言います。そんな人材を育成するため、従業員が自ら考え、チャレンジできる環境整備に努めています。
人の育成や評価については、自分のプロジェクトで失敗した部下から責任を取って辞めたいと申し出があった時に、失敗を将来に活かすのが責任だと説いたエピソードや横田社長が好決算の報告を父親にした時、褒めてくれるものと期待していたら「売上を上げ、利益を増やすことは、社長として当たり前のことであり、何も褒めることはない」と言われ、褒められず悲しかったけれど、納得した体験など、考えさせられる話が多くありました。
今46歳の横田社長は、事業承継について、時代の変化に追いついていくには、次の世代への権限移譲は早い方がよいと考えておられるようですが、創業イズムを引き継ぎながら、成長を続けるナンガがどんな未来を描き、実現して行くのか注目です。

株式会社ナンガ(滋賀県米原市)
代表取締役 横田 智之 氏
睡眠の質を上げる秘密
第二部:睡眠健康診断士、管理栄養士
玉腰 明子 氏

「‶眠り“から生まれるもの」がテーマの第2部のビジネスよもやま話は、「睡眠の質を上げる秘密」と題して睡眠健康指導士の玉腰明子様に講演をしていただきました。
諸外国に比べ、日本人の睡眠時間は短く(平均で7時間22分)、世界一眠らない国と言われいるそうです。睡眠不足は良くないことばかりで、心身の不調につながります。逆に従業員の睡眠時間が良くとれている企業ほど業績が良いという研究結果もあるようです。

講演では睡眠の質を上げるポイントとして、以下のようなことを紹介されました。
- リビング・ダイニングの明かりを暗めにする
- 眠るためのお酒はNG
- 自分にあった入眠習慣を身につけよう
- 眠くなってから布団に入る など
また、いろいろな事情で睡眠時間を長くとれない場合でも、「最初の90分」をしっかり深く眠ることができれば、最高の睡眠に近づけるようです。そのキーワードは「体温スイッチ」と「脳のスイッチ」。
よい睡眠のためには体温のコントロールが大事で、「体温スイッチ」の具体策としては、就寝90分前の入浴や、エアコン、布団などによる室内温度のコンディショニングがあげられます。
寝る前に脳に刺激的なことは避けるべきで、モノトナスの法則といわれる単調な状態にすることがポイントです。ですからスマホや強い光には注意が必要です。
次に、睡眠によい手のツボを刺激する指ヨガの紹介があり、会場の参加者もすぐに試していました。
講演は人生の3分の1を占める睡眠は「ギフト」だと考えて、大切にしなければならないというメッセージで締めくくられました。
