
「親の会社を継ぐ覚悟が持てない」「家業を新しく変えたいが、先代や社内の説得に悩んでいる」……。 スタートから10年目を迎えたMARKファミリービジネス研究会の5月例会では、中小企業庁主催「アトツギ甲子園」の運営で知られる一般社団法人ベンチャー型事業承継の代表・山野千枝様が登壇。
これまで70名以上の後継経営者を見守ってきた当研究会のエッセンスがすべて詰まった、孤独なアトツギを「圧倒的当事者(経営者)」へと変貌させるための熱い講義の舞台裏をお届けします。
「アトツギは楽じゃない」からこそ輝く。スタートアップにはない3つの圧倒的強み
世間からは「最初から会社があって楽だ」「敷かれたレールを走るだけ」と思われがちな後継者。しかし、山野様は「アトツギは、世間が思っているほど楽ではない」と、彼らが抱えるリアルな葛藤に寄り添います。
ゼロからスマートに立ち上がる起業家(スタートアップ)が“かっこいい”とされる風潮の中で、アトツギは古く泥臭い社内組織や、先代との人間関係という特有の理不尽さに日々直面しているからです。
しかし、ベンチャー型事業承継が目指すのは「アトツギもかっこいい」という世界観です。なぜなら、ゼロイチのスタートアップがどんなにお金を積んでも手に入れられない「最強の武器」を、アトツギは最初から持っているからです。
山野様は、アトツギが持つ圧倒的なポテンシャルとして、次の3つの強みを挙げられました。
- すでに戦う「現場(経営資源・技術・顧客)」があること
- 会社や事業の「存続への強いコミット」があること
- 数年先のバイアウトではなく、数十年の「長期思考」ができること
ただ家業を現状維持で「継ぐ」だけでは、しがらみに潰されてしまいます。しかし、この3つの武器を自覚し、「先代から受け継いだ価値を時代に合わせてアップデートする」という覚悟を決めた瞬間、古い家業は一変して、スタートアップを凌駕する「アトツギベンチャー」へと変貌を遂げるのです。
星野リゾートに学ぶ、家業をアップデートする「自分らしさ×時代観」の掛け算
では、具体的にどうやって古い家業を変革すればいいのでしょうか。講演では星野リゾート・星野佳路社長の言葉が紹介されました。 「ファミリービジネスの強みは、30年に一度のビジネスモデル転換システムがビルトインされていること」
社長交代のタイミングこそ、最大の変革チャンスです。そのためには、「先代の真似」をするのではなく、「自分らしさ・強み」×「家業の強み」×「これからの時代観」を掛け合わせることが不可欠です。
アトツギ自身が熱狂できる領域を見つけ、そこに家業の舵を切る。そのために、あえて家業とは関係のない外の世界へ飛び出し、時代の風を読むセンス(時代観)を磨くことが、二代目・三代目にとって極めて重要な仕込みとなります。
最大にして共通の壁「先代や古参社員の説得」を突破する唯一の処方箋
優れた実績を残すアトツギたちへのアンケートでも、会社を継いだ際の最大の課題は、やはり「社内や先代からの理解を得ること・説得すること」でした。
万人に共通する魔法の解決策はありません。しかし、有効なアプローチとして山野様は「自社の歴史を調べ、先代を客観的にポジショニングすること」、そして「同じ立場の人同士でナレッジシェア(情報共有)を行うこと」を挙げられました。 親子だからこそ感情的になってしまう問題も、同じ痛みを共有できる「アトツギ仲間」に相談することで、驚くほど冷静な解決策が見つかるケースが多々あります。
家業を手伝う「アトツギ」から、圧倒的当事者の「経営者」へ
「電卓をたたいていただけなら、家業なんて継いでいないですよ」 これは、あるアトツギ経営者の名言です。単なる数字の損得ではなく、自問自答の果てに「この一族の事業を自分が次の時代へ繋ぐんだ」という熱狂を見つけた時、人は “たまたま生まれた跡継ぎ”から、“わざわざ家業を継ぐ圧倒的当事者(経営者)” へと覚醒します。
MARKファミリービジネス研究会が、この10年間で70名以上の後継経営者を招き、こだわり続けてきたのも、まさにこの「アトツギ同士のナレッジシェアの場」を提供することです。社内では決して吐き出せない孤独や悩みを共有し、次の100年を創る仲間と出会う。 あなたも、家業をベンチャーとして熱狂させる第一歩を、ここから踏み出してみませんか?

