第一部:特定非営利活動法人 障がい者みらい創造センター
理事長 竹内 亜沙美 氏
第1部の講師は特定非営利活動法人障がい者みらい創造センター理事長の竹内亜沙美様です。
大学卒業後、特別支援学校などで知的障がいがある子供たちの教育に携わる中で、知的障がい者の雇用率が低いことや障がい者年金、親亡き後問題など障がい者に関わる社会問題が数多くあることを知りました。そんな中、難病に侵されていることが分かります。できる限りの治療を試みましたが、すべてに失敗。医者からは、万一の場合を考え、外に出ることも控えるよう言われます。
この時から人生の「おわり」をイメージするようになり、「人生は有限」であることを意識したと言います。「公務員ではなく、竹内亜沙美として生きて、やりたいことは全部やって死ぬ」と決めます。
投薬治療で復帰後、福祉施設でボランティア活動をしつつ、現職の教諭時代に特定非営利活動法人障がい者みらい創造センター(みらせん)を設立。学校の中でも、前例のない新しい取り組みに挑みますが、学校という大きな組織の中で理解されないことも多かったと言います。
そして経営団体のセミナーなどで経営を学ぶうちに「思いついたのにやらない自分」への罪悪感を抱き、もっと多くの障がいがある子供たちを支援したいと考えて公務員を退職、本格的に福祉の事業に取り組みます。苦労しながらも竹内様の考え方に共感するメンバーが集まり、設立6年目にしてスタッフ70名の会社へと急成長しています。
起業以降、みらせんは高校生向け就労支援をするみらせんジュニア教室、一泊二日で利用するみらせんステイ、リゾート型障がい者福祉施設(ショートステイ)など、それまで世の中にないものを作ってきました。こうした竹内様の投じた一石が名古屋の福祉を変えつつあると言います。また、飲食関連でも、今のカフェや紅茶の販売に加え、この11月から新ブランドでオフィスカフェ事業を始めるなど予定されているものを含めて14もの施設運営や事業に取り組んでいます。
講演の最後は将来の目標についてでした。目標は企業とともに「キャリア教育に特化した私学の特別支援学校」をつくることです。そしてその先に障がい者支援が当たり前になり、支援団体が不必要な日本になって、法人を解散することが最終目標だと締めくくられました。
福祉を取り巻く既存のルールや制度、人々の意識の理不尽さに真剣に怒り、それを正すために人生をかけて取り組む女性リーダーの姿に刺激を受けた講演でした。
[名古屋市]
特定非営利活動法人 障がい者みらい創造センター
理事長 竹内 亜沙美 氏
大学卒業後、特別支援学校などで知的障がいがある子供たちの教育に携わる中で、知的障がい者の雇用率が低いことや障がい者年金、親亡き後問題など障がい者に関わる社会問題が数多くあることを知り、社会を変えるために現職の教諭時代に特定非営利活動法人 障がい者みらい創造センター(みらせん)を設立。
その後もっと多くの障がいがある子供たちを支援したいと考え、公務員を退職。
現在、名古屋市内で就労支援事業所や放課後等デイサービスなど6つの施設を運営。また、愛知県美浜町に全国初のリゾート型障がい者福祉施設(ショートステイ)を建設予定で23年夏のオープンを目指している。
2017年度名古屋版人間力大賞理事長賞、2018年度青年版国民栄誉賞人間力大賞厚生労働大臣賞、2019年度女性社長TOP5(女性社長.net)、2020年度EO Tokyo INNOVATION PROGRAM TUNAGARO賞など受賞歴多数あり。
第二部:名城大学農学部昆虫学研究室 戸田尚希様
第2部のビジネスよもやま話は名城大学農学部昆虫学研究室の戸田尚希様による『昆虫たちの生存戦略』です。
冒頭で「蟲譜図説」という江戸時代のいわば、「虫の図鑑」の紹介がありました。その蟲譜図説に収載されているのは昆虫から両生類、爬虫類まで900種以上でした。昔は、昆虫もクモもベビもカタツムリも虫の仲間として考えられていました。この本では当時虫と考えられていたものをグループ分けしてあり、「卵から生まれるもの(卵生虫類)」「カラダに鱗のあるもの(鱗虫類)」というような分け方がしてあるのですが、面白いのが「湿けったところからうまれるもの(湿生虫類)」です。カエルやカタツムリと一緒になんとカッパが出てくるのです。江戸時代の末期、カッパは虫の仲間としてちゃんと「図鑑」に載っていました。それにカッパは1種類ではなく、たくさんの種類のカッパの絵が並んでいるのには思わず笑ってしまします。
本題に戻って、講演で照会された昆虫の生き残り戦略の一部を紹介します。
よく知られているのは「擬態」です。捕食者に食べられないようにするため、あるいは捕食するためエサに気づかれないようにするため、など様々な理由から、いろいろな工夫をして見つからないようにしています。どう見ても葉っぱだったり、木の枝にしか見えない姿に進化してきた過程を想像すると生物の不思議を感じます。
また、よく見かけるテントウムシですが、テントウムシの卵は、基本的に卵塊、塊ごとに一斉に孵ります。しかし、その中には孵らない卵があります。
じつは、これは「栄養卵」という卵です。(基本的に孵りません)。つまりお母さんは、卵という形のお弁当も一緒に産んでいるわけです。この栄養卵の数は、まわりにエサが多いか少ないかで決まるようで、たくさんエサがあれば、栄養卵は産卵されません。
テントウムシのお母さんが次世代を生き残らせるために赤ちゃんとお弁当をおなじ卵の形で置いておく戦略です。
その他カブトムシの角の大きさと羽根の大きさの関係や、ハチのオス・メスの産み分けのメカニズムなど講演のすべての話題を詳しく紹介することはできませんが、「へぇ」と思うことばかりの興味深い内容でした。