高齢者雇用のパイオニア!加藤製作所のシニア戦略
第一部:株式会社加藤製作所(岐阜県中津川市)
代表取締役社長 加藤 景司 氏
第8期MARKファミリービジネス研究会が、始まりました。2024年4月3日(水)、今年のMARKファミリービジネス研究会の幕開けは株式会社加藤製作所(岐阜県中津川市)の加藤景司社長の講演です。
加藤社長は、日本が抱える「人口減少」、「高齢化」、「生産年齢人口の減少」という3つの課題を「国難」と捉え、働き方への対応を考える時、「女性」「外国人労働者」そして「高齢者」がカギだと言います。
株式会社加藤製作所は、20年以上前から先駆的に高齢者雇用に取組んできた高齢者雇用のパイオニア企業です。従業員89名中、60歳以上が40名。そのうち22名が70歳以上ということです。
講演の冒頭で昨年NHKのBSで加藤製作所の高齢者雇用を取り上げた番組のビデオが流されましたが、そこに映る幸齢者(当社では高齢者のことをこう呼んでいる)従業員たちの働く喜びに溢れた表情がとても印象的でした。
しかし、ここに至るまでには試行錯誤の連続。リーマンショックはじめ数々の危機を乗り越えてきた具体的なエピソードと併せ、高齢者雇用の留意点や課題などをお話しいただきました。
現在の加藤製作所は、金属加工業界で絞りや溶接加工の高い技術を持って、家庭電気器具や自動車の部品、防音壁などを製造しています。関連会社にはエレベーターの販売・据付工事・保守管理などを行う会社もありますが、元々は明治21年(1888年)創業の鍛冶屋です。今年で創業136年を迎えます。いわゆる百年企業の経営者として、加藤社長は、会社の長期的な繁栄の実現のためには、「何のためにこの会社が存在するのか」という「経営理念」を明確にし、それを必ず達成するという決意と信念が重要だと説かれます。
そして最後に、「縁ある人々の物心両面の幸せのために、そして未来永劫続けるために私達リーダーの人間力が試されます。」というメッセージをもって、講演を締めくくられました。
経営者としての一貫した信念が感じられた講演でした。
株式会社加藤製作所(岐阜県中津川市)
代表取締役社長 加藤 景司 氏
明治時代に農具制作の鍛冶屋を始めた創業者から数えて4代目。株式会社加藤製作所は、多品種少量ロットから量産加工まで、あらゆる材質の加工を手掛けるプレス板金部品の総合加工メーカーである。
少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的とする高年齢者雇用安定法では、70歳までの定年の引き上げや定年制の廃止などを企業の努力義務としているが、加藤製作所が2001年より行った、土・日・祝日をシルバー世代の社員が中心となって365日工場を稼働する”コンビニ工場”の試みは世間やメディアの注目を集めた。土日の稼働をやめた現在も従業員の半数の40人が60歳以上のパートタイマーで、うち22人が70代以上という。
認知症とは
第二部:医療法人士正会(愛知県名古屋市)
医師・医学博士 中村 了氏
第2部のビジネスよもやま話は、医療法人士正会栄エンゼルクリニックの副院長の中村了(なかむら あきら)様による「認知症について」の講演でした。
統計によると国民の6人に1人が認知症で、85歳以上に限ると55.5%が認知症だと言います。今の日本ではだれもが当事者になりうる認知症ですが、詳しくは知らないという人も多いと思います。
認知症は、病名ではなく症状のことで、その原因別にアルツハイマー型認知症やレヴィー小体型認知症などいくつかに分けられます。その中の多くは、決定的な治療法のないものです。
うつ病と似たところがあり、講演では様々な例をあげて、クイズ形式で認知症の診断基準を学びました。
また、認知症は生活習慣病の側面があるということです。喫煙や低身体活動(運動不足)、糖尿病、中年期の肥満などにより、アルツハイマー病になるリスクがそうでない人の1.4~1.8倍くらいになるそうです。認知症の予防戦略として知っておきたいところです。
次に進歩の著しい医学の分野で、認知症の新薬の話題もニュースになっていますが、効果面や費用面でまだまだ誰でも使えるようなレベルには達し切れていないようです。
最後に、認知症の人への家族や介護者の対応法についても触れていただきました。終始、ユーモアにあふれた講演で、おなかを抱えながら、知っているようで、あまり知らない認知症について楽しく学ぶことができました。
医療法人士正会
医師 中村 了氏(医学博士)
厚生労働省は、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると推計している。今の日本は、年齢に関係なく、働く意欲のある高齢者がその能力を発揮できる社会に向かいつつあるように感じますが、一方で高齢者は常に健康面の不安を抱えており、特に認知症への関心は高い。
講演では認知症の発症の仕組み、治療法、予防法から認知症の人への接し方などを中京長寿医療研究推進財団評議員で、認知症サポート医でもある。