6月1日(水)にMARKファミリービジネス研究会6月例会を開催しました。
今回の講師は(株)サンワカンパニーの山根太郎社長です。
サンワカンパニーはキッチンなどの住宅設備や建築資材のインターネット販売事業を手掛ける大阪の会社です。
山根社長は2014年にアトツギとして父親が1979年に創業したこの会社の社長に就任しました。それまで後を継ぐことなど考えていなかった山根社長ですが、サンワカンパニーを自分の目指す一流の会社にするために、社長就任から8年間に行ってきた数々の社内改革の事例をユーモアを交えながら熱心にお話いただきました。
山根社長は「代替わりは組織を変える絶好のタイミング」だと言います。しかし、改革やイノベーションには痛みが伴います。父親の時代にそれまでのB to B(卸売業)からB to C(ネット通販)に切り替えた時はそれまでの得意先から反発を買いました。しかし、その痛みを乗り越えることで、これが後になって参入障壁となり、今の地位を築いたといいます。
また、従来の「デザイン最重視」の方針から、「品質を伴ったデザイン重視」の方針に切り替えていく過程で、古参の社員の存在が会社のマイナスになると考え、退職をしてもらうなど、社長就任時から社員数は5倍以上(300名)に増えましたが、社長就任時にいた社員のうち現在も在籍しているのは4名だけとのことです。目指す組織構築をするために、当社が招き入れたい人物像を明確にして、当社にマッチした人を採用しています。
社長就任時は、社長はどんな仕事も社内で一番できて、何でも知っているスーパーマンのような存在でなければならないと考えていましたが、今は、社員が各々の得意分野でその力を十分発揮できるよう、いわば優秀な人たちを上手に使う「猛獣使い」のような役目が社長の役目だと考えています。
「やる気のある人が伸びる組織づくり」を追求する山根社長のリーダーシップには、山根社長の経営哲学や体験からもたらされた考え方から生み出された様々な信念や仕掛けが内包されていることが分かる講演でした。
続いての「ビジネスよもやま話」は、企業向けの研修として注目されている手法「哲学対話」について豊田工業大学の江口建教授に解説していただきました。「哲学対話」は心理的に安定した環境で、あるテーマについて考え、意見を述べ、他人の意見を聴くことで、自分の中の視点・観点を増やし、他人の価値観を理解し、尊重するというものです。
「会議で創造的なアイデアが出ない」「社員がすぐに辞めてしまう」「社員が「やりがい」を感じない」等々の課題を感じている会社には、参考にしてもらいたい講演でした。
講師紹介
株式会社サンワカンパニー
代表取締役社長 山根太郎 氏
1983年奈良市生まれ。関西学院大学卒業後、伊藤忠商事株式会社繊維カンパニーへ入社。
上海駐在中、父親が創業した株式会社サンワカンパニー(住宅設備機器・建築資材の企画開発、輸入、販売)の代表社員から「今の社長が経営を続けると、戻ってくる会社が無くなってしまいます……」と1通の手紙が届く。亡くなった父親の創った会社を守るため、同社に入社し、取締役会で社長退任の動議を出し、自身が代表取締役社長に就任。(当時、東証マザーズ最年少社長)。
業界の常識を打ち破る住宅設備機器のEC販売を推進し、組織改革やモジュラー建築「CLASCO」などの新規事業を展開するなど数々の改革を起こし業績を向上させる。自身の事業承継の経験をもとに、事業承継に関する著書の出版や「ベンチャー型事業承継」など若手の後継者に対するレクチャーや支援を行っている。