10月2日にMARKファミリービジネス研究会10月例会を開催しました。

10月のテーマは「絆を深める」です。

大家族経営 社員の幸福と地域社会への恩返し

松川電氣株式会社(静岡県浜松市)
代表取締役 小澤 邦比呂 氏

浜松市の電気工事設備会社松川電氣株式会社の小澤邦比呂社長に「社員の幸福と地域社会への恩返し」という演題で講演をしていただきました。

「小さくても超一流に」を目指す小沢社長は自社を松川一家と呼び、大家族経営を実践しています。小沢社長の講演には大家族経営を行う理由や考え方を表すいろいろなキーワードが出てきます。そのいくつかを紹介します。

  • 「知恩報恩」(恩を知り、恩に報いる):長い年月の中において様々なご縁、多くのご恩を頂き今がある。我々はそのご恩にいかにして報いていくか、地域社会にお返しをしていくかが我々一人ひとりまた企業としての成長がある。
  • 「ノブレス・オブリージュ」(高い身分に伴う道徳的義務):江戸時代豪商大店の主人は、使用人が「おはようございます」と挨拶すれば、「おはようございます」と同格の言葉で挨拶を返し、常に足元で働く人々に感謝と励ましの心を持っていた。それがリーダーの人間としての器である。
  • 「即今動」(そく・いま・うごく):創業当時を忘れず、どんな小さな仕事でも直ぐに対応する。利益は信頼の後についてくる。

そして、小澤社長は「よい社会づくりは、よい会社作りから」と考え、「大家族経営」を経営テーマに据え、「愛社精神ではなく、愛社員精神」をスローガンに社員と協力業者とその家族の幸福のためにできることは何かを考え、松川一家の「3つの健康」づくりに向け様々な施策を行っています。

3つの健康とは、身体の健康、経済の健康、心の健康です。代表的な施策を紹介します。

身体の健康づくり(支えてくれる家族のために)

  • 40歳以上の社員(パート)、社員の配偶者、40歳以上の独身者はその母親または父親に全額会社負担で人間ドックを実施。インフルエンザワクチンの接種も自社と協力会社の全社員と配偶者を対象に会社負担で実施。
  • 社員(パート)、社員の母親、協力業者の代表者などの誕生日にケーキとブリザードフラワーに社長メッセージを添えてプレゼント。社員(パート)、協力業者を対象に一流のホテルや旅館に泊まる社員旅行を全額会社負担で開催。

経済の健康づくり

  • 実質定年なしで、65歳を過ぎても減給なし。最高齢の社員は78歳。
  • 病気やけがはいつ起こるかわからない。働けない時こそ会社で保証することが大切であり、傷病手当金を100%支給する。
  • 社員が在職中死亡したり、就労不能になり退職した場合、子供が大学など希望する教育機関を卒業するまで教育費の一部を支援する育英資金制度あり。

心の健康づくり(仕事に遣り甲斐、働き甲斐、生き甲斐)

申し出制

  • 全社員を対象に受注工事の内容説明を行い、責任者を募る。立候補者は工事に対する自分の思いや方法についてのレポートを書き、その後社内で検討し、責任者を決める制度。お客様を感動させる施工は一番思いが強い者が行うという考えによる。

また、「社員の幸福」と並ぶもうひとつの松川電氣の経営のテーマ「地域社会への恩返し」では、地域貢献・社会貢献に熱心に取り組んでいます。社内には社会貢献活動部という組織があり、1年間の活動を計画、実行しています。街頭募金活動、地域の外国人学校への支援や奨学金制度、児童養護施設や障がい者施設への支援活動など現在の活動事例は35項目にものぼります。そして街頭募金活動や清掃活動など地域貢献活動は出勤扱いとされ、年間7日間のボランティア休暇もあります。

2時間にわたる熱のこもった講演を聴いて、松川電氣は社員と家族の幸せを追求し、地域をはじめ支えてくれたみんなに恩返しをするという小澤社長の強い想いと周囲の人からの共感と支持が高い企業価値を生み出している会社だということがよく理解できました。

「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞はじめ数々の表彰を受けている会社であることが納得できました。

松川電氣株式会社(静岡県浜松市)
代表取締役 小澤 邦比呂 氏