今年度のMARKファミリービジネス研究会が始まり、4月6日に第1回目を開催しました。

今回の講師はカンボジアで胡椒を栽培し、カンボジア、日本をはじめヨーロッパでもビジネスを展開しているKURATA PEPPER Co.,Ltd.(クラタペッパー)の倉田浩伸社長です。

演題は『5㎜の粒から考えるSDGs』。 5㎜の粒とは胡椒のことです。

世界遺産のアンコールワットで有名なカンボジアですが、約20年にわたる内戦が終結した後の1992年に倉田社長はNGOのボランティアとしてカンボジアを訪れます。国土も人も産業も荒廃したカンボジアの復興を支援したいという思いから、カンボジアの人々の経済的自立を手助けするために倉田社長が取り組んだのが胡椒の栽培です。

内戦前のカンボジアは胡椒栽培が盛んで、世界一のクオリティといわれた胡椒があったそうですが、内戦により胡椒の産地はほぼ壊滅状態でした。そんな中、わずかに残った畑を地元の農家の協力を得ながら、少しずつ広げていきました。

胡椒の価格は安く、また天候など自然の条件により大きく変動します。採算を合わせることにも、販路の拡大にも大きな苦労がありましたが、土産物として販売する戦略が契機となり徐々に事業は安定していきます。多くの種類の商品がありますが、クラタペッパー独自の商品に完熟胡椒があります、胡椒というのは果物で収穫は年1回、ブドウのように房で実ります。胡椒の実は熟すと真っ赤なるのですが、完熟した胡椒の実は大変貴重なもので、辛みのなかにも甘みがあり、大変おいしいそうです。

他にも、生胡椒のしょうゆ漬けなどのオリジナル商品の開発やせんべいやちくわといった他社とのコラボレーション商品など種類も増え、新聞・雑誌・テレビなどメディアで紹介されることも多くなっています。

カンボジアで事業を始めて約30年の倉田社長が講演で語られたのが「多様性の価値」です。例にあげられたのがイソップ童話の「アリとキリギリス」です。夏の間に楽しく歌を歌うなどして楽しい時間を過ごしていたキリギリス。一方、アリたちは暑い中、せっせと食料を求めて働き続けていました。キリギリスはそんなアリたちの様子をバカにして見ていましたが、やがて冬になると食料も無くなり、キリギリスは生きていけなくなってしまいます。しかし。アリたちは夏の間に汗して蓄えた食料があったおかげで安心して冬を越すことができました、といった物語です。

倉田社長はキリギリスの生き方を評価します。何かモノを生産したり、それをみんなで行うことだけが価値があるわけではなく、キリギリスの歌のように、芸術や文化、スポーツなどに打ち込むことは、そしてそれを大勢でやっても、ひとりでやっても同じように価値があるということです。

カンボジアは外から入ってくるものに対して寛容で、あまり抵抗なく受入れてくれる社会だといいます。冬のないカンボジアはキリギリスの生き方を否定しません。倉田社長は、社会は生きている人のためにあり、多様性を受け入れられる社会を作りたいと語られます。最後に「これまで私がカンボジアでやってきたことを、日本でやっていかなきゃ」と結ばれました。

第2部の「ビジネスよもやま話」では、『記者が食い付くプレスリリースの極意』というテーマで、中日新聞社中日BIZナビの宮本隆彦編集長に講演をしていただきました。現役の経済部の記者の方から直接お話をうかがう貴重な機会でした。記事に取り上げてもらうには、広告的なものでなく、公益性が大事だが、やはり何と言ってもニュース性が一番とのこと。普段は聞けない新聞社内部の事情などの話も交えて、具体的に取り上げてもらうためのニュースリリースの仕方を知ることができました。中日BIZナビの紹介もあり、情報発信のツールとして活用できることが分かりました。

講師紹介

株式会社クラタペッパー 代表取締役社長
倉田浩伸 氏

亜細亜大学経済学部経済学科を卒業後、1992年8月よりNGO「JIRAC」に参加し、当時およそ20年間にわたる内戦が終わって間もなかったカンボジアを訪れる。その後"自分でできること"を探して、1994 年にプノンペンに調査事務所を設立。カンボジアでビジネスをするならば農業だと考え、ドリアンやココナッツの輸出に乗り出すが失敗。

次に手がけたのが胡椒。内戦で絶滅寸前だった"赤いダイヤ"と呼ばれる胡椒を復活させる。1997年には胡椒農園を創業。そして、2005 年にプノンペンに胡椒専門店「KURATA PEPPER」をオープン。

現在はコッコン州スラエアンバルに5.8ヘクタールの農園を有し、「世界一美味しい胡椒」と称される胡椒を生産している。29年にわたってカンボジアの農業を支え、奇跡の胡椒を復活させた倉田社長の講演から、どうすれば地域やそこに住む人を幸せにできるかを考える。

経歴

1998年 〇〇大学法学部法律学科 卒業
2001年 司法試験合格
2002年 最高裁判所司法研修所 入所
2007年 弁護士登録 (〇〇弁護士会)
2007年 〇〇法律事務所 入所
2017年 サンプル法律事務所 開設