11月5日に今年のMARKファミリービジネス研究会の最終回、11月例会を開催しました。
11月例会のテーマは「小さくても、偉大なもの Small Giant」です。
『世界にない、を探求する』
第一部:株式会社コーワ(愛知県あま市)
代表取締役 服部 直希 氏

このテーマは今回の講師の企業、株式会社コーワ様が雑誌Forbes Japanが大企業やスタートアップ企業ではない、社会の進化を支える新しい中小企業を表彰する「Small Giants」で入賞された企業であることに由来します。
代表取締役の服部直希社長は同社の3代目。先代(2代目)の娘婿です。
創業90年のコーワはブラシ業界のトップメーカーです。コーワの社名は知らなくても、我々の日常生活のなかで、たくさんのコーワ製品の恩恵に預かっています。その代表格が電気掃除機のヘッドのブラシです。国内家電メーカーのほとんどの掃除機のブラシにコーワの部品が採用されています。その理由は、棒状の金属(現在は樹脂)をひねりながら成形し、同時にブラシを植毛するという回転ブラシの製法の特許技術によります。そして畳から絨毯、フローリングへと日本の家屋の床の変化に応じ、併せて軽量化の流れに合った製品を、家電各社に提案・開発していくことで現在の掃除機ヘッドでの圧倒的なシェアを獲得、維持しています。
家電分野では、いわゆる「お掃除エアコン」のフィルターや、洗濯乾燥機の自動清掃機構でも40件以上の特許を保有し家電各社に提供されています。また、ガソリンスタンドの洗車機の洗車ブラシも扱うなど一般消費者が外から見えない所で、多くの製品が活躍しています。また、産業機器分野での製品群も紡績、精密機器、半導体、鉄鋼、食品など多岐の業種にわたります。
例えば、自動車では、車のボディを作る鋼板が切り出されプレス機にかけられる前の「洗浄」の工程に使われるブラシロールや不織布ロールといった特殊なブラシを扱っています。ロールとブラシを作れるのはコーワだけです。様々な業界の名立たる大手企業と直接取引があり、下請けでありながらも技術力で攻勢をかけられるブラシ業界の唯一無二の存在がコーワです。
ブラシ業界のSmall Giantのコーワですが、創業以来ブラシ一筋でやってきたわけではありません。創業者が手掛けた事業はブラシ製造以外に化粧品、貴金属販売、アメリカも含めたゴルフ場やマリーナなどのレジャー施設、飲食業、不動産など様々ありました。
しかし、これらの事業は娘婿の服部社長がコーワに入社した後の2001年のバブル崩壊により一気にマイナスの資産となり、苦境に陥ります。結果的には保有資産の処分等により何とかこの危機を乗り切ったことが、今のコーワの成長につながっていると服部社長は振り返ります。先代の実子ではなく娘婿という立場でしたが、社内に妻以外に創業家の人がいなかったことなどにより、数字に基づく冷静な経営判断ができたことも大きかったようです。
危機を乗り越え、順調に業績を伸ばしてきたコーワですが、家電メーカーが外資に売却されたり、自動車のEV化による金属加工部品の減少が見込まれるなど事業環境の不確実さが増しています。そこで服部社長は2019年に経営ビジョンを再定義します。
「探求心で世の中の役に立つ」というのがその経営ビジョンです。
コーワは特許庁長官表彰を受けるなど知財を強みとして成長してきた会社です。当時は製造業というよりも商社に近い事業形態になっていたのを「探求の最上級のクリーンブランド tanQest」という自社ブランドを立ち上げ、自社のノウハウで世界一の製品を作ることを目指しました。そこから生まれたのが業務用掃除機のα-1や日本の№1ブラシ屋が作った箒 ONE STROKEです。これまで世界になかったこれらの新製品のヒットやメディアでの評判もあって、あいちブランドイノベーションアワード最優秀賞やForbes JapanのSmall Giantの受賞が相次ぎました。
これは「探求心で世の中の役に立つ」という3代目服部社長の掲げる経営ビジョンが、コーワの企業文化・企業風土として浸透・定着している証ではないでしょうか。
ここまでがコーワ90年の歩みですが、2035年の創業100年に向けて新しい展開が待ち受けています。コーワの事業のひとつであった化粧品と医療関連の事業を切り離し、中核のブラシ製造とは別組織に再編し、グループで売上げ100億円を目指します。今回の講演は、創業者や先代から続く有形無形の経営資源を、よい意味で創業家のしがらみの少ない娘婿という立場のリーダーが引き継ぐことで、成長に結びつけた優れた事例だと思います。

株式会社コーワ(愛知県あま市)
代表取締役 服部 直希 氏
『世界を驚かせた日本の工芸』
第二部:元名古屋市博物館学芸員
小川 幹夫 氏

「小さくても、偉大なもの」がテーマの11月例会の第2部は工芸の「超絶技巧」を取り上げ、元名古屋市博物館学芸員の小川幹夫様に「世界を驚かせた日本の工芸」と題して話を伺いました。
日本の工芸は陶磁器、漆器、ガラス、彫金、竹細工等々があります。そもそも芸術という中に美術があり、工芸は美術の中のひとつのカテゴリーです。
美術はArtの日本語訳ですが、美術という言葉は明治6年のウィーン万博の時にあわてて作られた言葉だそうです。文字通り美しい(美)わざ・技術(術)なのですが、日本人の感じる美と中国人のそれは異なるようです。美という漢字には羊が含まれます。羊は大きくて美味しいものを表し、中国では大きいことがすばらしいことです。一方日本語の「うつくし」は愛らしい、かわいい、いとしいという意味です。日本では美しいものは可愛く、小さく、細密なものです。つまり細密で美しいもの=工芸です。
日本の美術が総合芸術ですが、西洋の美術とは絵画、彫刻、建築であり、工芸は美術の範疇に含まれません。工芸はアーティストではない職人が、親方の言われるまま、同じ物を作り続けてきたもの。工芸=美術を応用した「応用美術」と捉えられてきました。
そんな中、19世紀後半に万国博覧会に出品されたアーティストのような職人が作るアートのような日本の繊細な工芸品が世界を魅了、ジャポニズムのブームが起きます。
小川様によると日本の工芸の特徴は、使う者への配慮、いかなる場面にも「美」を求めることと言われ、講演では様々な種類の一級の工芸品が写真で紹介されました。日本の工芸品の市場は縮小傾向にあるようですが、「世界に誇る日本の武器」としての再評価も進んでいます。モノづくりの国日本の精神に触れた講演でした。

