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第3回 年々増えるクリニックの廃業・休止
【開業医のためのクリニックM&A】岡本雄三税理士事務所・MARKコンサルタンツ代表 岡本雄三
厚生労働省の医療施設調査(調査期間2016年10月~17年9月)によれば、個人の医科診療所は2593施設が廃止、385施設が休止となりました。医療法人の医科診療所は2214施設が廃止、329施設が休止しました。
つまり、公的医療機関や公益法人などの医療施設を除く、個人および医療法人の医科一般診療所は、4807施設が事業廃止、714施設が休止となっています。一部休止も含めれば、その年には6000近くの、継承問題を抱えた一般診療所が存在していたことになります。
事業廃止や休止の理由として、医師の高齢化、後継者の不在、または後継者がいても承継しない、さらには事業がうまくいかなかった(注)などが考えられます。
(注)帝国データバンクによると、2018年の医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は40件(病院3件、診療所14件、歯科医院23件)で、前年に比べ15件(60.0%)増加。40件に達したのは2010年以来8年ぶりだった。
前回、クリニックの第三者によるM&Aが、後継者問題を発展的、かつ円満に解決する上で有力な選択肢の一つであることをご紹介しました。
医業は、わが国において代表的なファミリービジネスであり、世襲が多く、親子承継をするのが一般的でした。
クリニックは地域に欠かせぬ存在(写真はイメージです)
ただし、他の業界の事業承継と異なり、弁護士、税理士等の士業と同じく、医師免許という一身専属の国家資格の取得が承継を進める上で必要です。これが、他の業界の事業承継に比べてクリニックの事業承継の難易度を押し上げていると思われます。
◇クリニックM&Aの具体的な流れ
事業承継の手法としてM&Aを選択した場合、どのような流れで物事が進んでいくのでしょうか。売り手(承継希望医)と買い手(開業希望医)で若干異なるので、ここでは売り手の手順をご説明します。
グラフで見る「クリニックM&Aの流れ」(拙著「開業医のためのクリニックM&A」幻冬舎より)はこちら
(1)事前相談
アドバイザーからのM&Aの大まかな流れや手順、費用、メリット、デメリットなどについて説明
M&Aの目的や理由、事業の現状、希望条件(時期、譲渡価格など)、M&Aのスキーム(出資金譲渡、合併、事業譲渡などあり)などをヒアリング
(2)仲介契約の締結
アドバイザーへの報酬や契約条件についての確認
アドバイザーへの信頼感や力量を判断したうえで仲介契約を締結
3)概要書作成
価格算定に必要な書類や資料(決算書、リース契約書、開業地の不動産の契約書などのコピー)を提出
資料に加え、クリニックの規模、立地、など様々な要素から価格を算定
承継に当たっての条件や要望などをリストアップ
(4)マッチング
買い手のターゲットを絞り、アプローチをかけて打診(売り手は匿名、売り手の情報についても秘密厳守)
アドバイザーがターゲット先と接触し、情報を提供してもらい、初期的な分析を実施
双方が気に入れば、マッチング成立
(5)秘密保持契約の締結と情報開示
秘密保持契約を締結後、こちらの詳細情報を開示
このタイミングでクリニックの施設見学やクリニック周辺地域の実態視察などもあり
(6)開業希望医との条件交渉
M&Aに関する条件や要望について、買い手と面談
アドバイザーが間に立って、調整
(7)基本合意書の締結
基本合意は法的な義務を規定するものではないが、これまでの話し合いでの合意事項を双方が確認したことを意思表明するために作成
合意書には当事者以外との交渉ができなくなる排他的交渉権などが織り込まれ、M&Aに向け大きく前進する段階
(8)デューデリジェンスの実施
デューデリジェンス(DD)とは、クリニックの資産的価値を適正に評価する手続き。財務面のDD、法務面のDD、労務面のDDなどがあり、クリニックの経営実態の把握とリスクの抽出、M&Aによる相乗効果の分析などをする目的で、収益性やリスクなどを総合的かつ詳細に査定し、価値を算出
DDによって、重大な欠陥やリスクが見つかった場合は、査定額からマイナスしたり、基本合意書の内容の変更を交渉
(9)最終契約書の締結
全ての交渉が終了後、最終契約書を締結。これにより当事者にM&Aを実行する法的義務が発生
新院長側はクリニックの診察開始に向け、保健所や厚生局への届出手続きについて事前相談開始
(10)クロージング
対価を支払い、クロージング
アドバイザーへの報酬支払
(11)後継クリニックの診療開始
最終契約締結のめどが立った頃から診療開始の準備
クロージング後1ヶ月くらいの診療開始を目処に実行計画策定
新旧院長間で患者や従業員の引き継ぎや労務管理(労働時間、各種手当の支給額、就業規則、その他労使慣行など)の擦り合わせ
(12)フォローアップ
後継クリニックの診察開始に向けて、新院長はクリニックの大きな方向性を従業員に提示し、従業員の不安を解消し、モチベーションを高めることが重要
◇クリニックM&Aの特異性
クリニックM&Aは、一般企業のM&Aよりはるかに手続きが複雑です。「医業」という行政の許認可ビジネスならではの特異性があるのです。それに医療は患者やその家族、従業員など人間相手であればこその複雑な利害関係もあります。
また、クリニックのM&Aでは医療制度に対する知識が必要なことは言うまでもありません。M&Aの専門業者でも、特殊なクリニックのM&Aとなると、ミスや失敗が起こることもあります。
だからこそ、豊富な経験と実績、各専門分野でのネットワーク、高度な情報収集力などが求められます。クリニックM&Aを成功させるには、信頼の置けるアドバイザーを選ぶことが必須条件といえるでしょう。
まずは事前相談から。関心のある方は「MARKコンサルタンツM&Aセンター」のホームページからお気軽にご相談ください。
岡本 雄三(おかもと・ゆうぞう)
岡本雄三税理士事務所代表。株式会社MARKコンサルタンツ代表。税理士、行政書士、宅地建物取引士、M&Aシニアエキスパート、経済産業省認定経営革新等支援機関。
1967年生まれ。91年早稲田大学商学部卒業。98年岡本雄三税理士事務所開設。2000年公益社団法人日本医業経営コンサルタント登録。個人医院の開業、医療法人の設立、税務など、医業コンサルティング業務のほか、一般法人の税務、事業承継、M&A支援、資産税にかかわるコンサルティング業務を手掛ける。「後継ぎがいない会社を圧倒的な高値で売る方法」「開業医のためのクリニックM&A」など著書多数。