新型コロナの影響で5月、6月と休止していた経営者のためのビジネスセミナー「MARKファミリービジネス研究会」ですが、久しぶりに今年度の2回目を7月1日(木)に名古屋市中区栄のナゴヤイノベーターズガレージにて開催いたしました。

今回の講師はファームサイド株式会社の代表取締役佐川友彦様でしたが、講師の都合で当日急遽オンライン配信となったため、会場にご参加いただいた方とご自身のパソコンでご覧いただいた方と分かれての開催となりました。急な変更で混乱を招いたことを改めてお詫び申し上げます。

 

今回の講演の舞台は「阿部梨園」という栃木県宇都宮市にある小規模な梨農園です。農業経営についての講演でしたが、農業だけでなくどんな業種にも共通の業務改善がテーマです。キーワードは「小さな改善」と「現場の観察」です。

 

佐川様は東京大学農学部を卒業後、外資系の企業の研究開発部門に勤務していましたが、縁あって栃木県の阿部梨園の経営に関わることとなりました。当時の阿部梨園は梨の品質にこだわり、美味しい梨を生産することには長けていましたが、一方で経営の面では問題だらけ、利益が出ているのかどうなのかも分からないような状況にありました。

これは小規模経営の農家に共通する課題だと気づいた佐川様は代表の阿部と二人三脚で「100の組織変化プロジェクト゛プロミス100“」という活動を始めます。4カ月間で100件の業務改善を実施することが目標です。

まず整理整頓から始め、情報収集や業務手順の改善、接客の改善、コスト削減などへ広げて行きました。改善を進めて行くうちにスタッフが前向きになり、コミュニケーションが促進され、職場の団結力が強くなるなどの効果が生まれました。そこから学んだことは「論より行動」。コンサル的な提案や指示ではなく、自ら率先して動くことで業務改善が目に見えて進み、組織開発に効果テキメンなことが実感されました。

残念ながらこの時の改善件数は目標の100件には至らず、73件にとどまりましたが、この改善を続けたらどんな農園になるのか、明るい未来が見えてきました。

その後、業務改善・経営改善の数は500件を達成。小さな改善の積み重ねによって意思決定の合理化、計数管理、スタッフ教育・育成への注力、ブランディング、生産管理技術の向上等々、当初描いていた目的の多くを達成することができました。

阿部梨園が世の中に広く知られるきっかけとなったのが、こうしてうまれた経営改善事例をWeb上で無料公開したことです。企業秘密とも言える農園のノウハウを無料で公開することについては反対意見もありましたが、「有料で少数の人の力になるより、無料でひとりでも多くの人の力になりたい」という佐川様の想いから公開に至りました。

「阿部梨園の知恵袋」と名付けられたこのプロジェクトですが、無料提供でも制作費はかかります。そこでクラウドファンディングで賛同者から資金を集めることを計画。目標金額100万円で改善事例100件公開、300万円で300件公開、300万円以上でコミュニティ活動実施という目標に対し、330人の方から総額450万円の支援を得ることができました。この活動は多くのメディアでも取り上げられ、更に注目を集めることになりました。

 

佐川様は講演の最後に「小さい改善のすすめ」として、こう結ばれました。

・小さい課題解決でPDCAを高速回転したあとで、大きいチャレンジへ

・勉強や全体最適の探索から着手せず、論より行動。全体最適でなく、部分最適でOK!

・アイデアは無限の可能性があり、常識にとらわれず自由な発想でネタ探し

そして、先の読めない時代の課題抽出の手法は、データやヒアリングから課題を抽出するのではなく、現場をよく観察することで課題を見つけ出すことが大事という考えには大いに共感させられました。

今回は農業経営がテーマでしたが、改善点を見つけて解決する、ことは業種を問わず共通の課題です。

実例を通じ、現場を観察することで課題を見つけ出し、小さな改善を重ねることの重要性を学んだ講演でした。