第8回 なぜ多数の専門家がチームで取り組むのか
【開業医のためのクリニックM&A】岡本雄三税理士事務所・MARKコンサルタンツ代表 岡本雄三

先月、「シリコンバレー・グローバル・リーダーシップ・プログラム」に参加するため、米国のスタンフォード大学に1週間、滞在しました。

スタンフォード大学。米カリフォルニア州スタンフォードに本部を置く(時事通信)

米国西海岸、カリフォルニア州パロアルトにある大学のキャンパスは、東京ドーム700個分。言い換えるなら、世田谷区と同じくらいの広大な敷地面積があり、モスクワ大学に次いで世界で2番目の大きさです。

英タイムズ紙の2018年の世界大学ランキングでは、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学に次ぐ世界3位とされています。

サンフランシスコから約60㎞南東に位置し、地理上も、歴史的にも、シリコンバレーの中心に位置しており、シリコンバレー発のイノベーションを人的、技術的に支えています。

驚異的なテクノロジーの進歩による第4の産業革命により生まれ、今や世界を席巻する「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムの米IT大手4社)の本拠地で、世界を変えるスタートアップ企業の空気を感じてきました。

大学では、シリコンバレーの現状、スタートアップ企業の動向、デザインシンキング、マインドフルネスについての講義を受けました。

世界を席巻するGAFA(AFP時事)

世界のICT(情報通信技術)をリードするシリコンバレー。世界のリーダーとして、グーグルの行動規範「Don’t be evil(邪悪になるな)」、グーグルの持ち株会社アルファベットの「Do the right thing(正しいことをやれ)」のように、哲学や倫理観、社会心理学が重要視されていることを学ぶことができました。

シリコンバレーのスタートアップの人々が、目の前の自分の利益のためではなく、「100年後により良い世界が持続するために何をすべきか」を考えていることを、肌感覚で知ることができ、大変に有意義な時間を過ごすことができました。

◇医療特有の手続きにさまざまな専門家

さて、今月のテーマに移りましょう。

クリニックM&Aの成否を握る5番目のポイントは「医療特有の手続きに精通したアドバイザーを見つける」です。

 クリニックの M&Aについては、以下のように、さまざまな専門家がそれぞれの専門の観点から業務を行っています。

(1)M&A支援専門会社(コンサルタント) 売り手・買い手の情報をネットなどでたくさんそろえ、さまざまな場面で支援を行います。

(2)税理士事務所 M&Aにかかる納税や資金繰り、顧問先とのマッチングなど幅広くサポートをします。また、M&A後のサポートも充実しています。

(3)弁護士事務所、司法書士事務所 M&Aにかかる契約書の作成や、法務面でのアドバイスを行います。

(4)社会保険労務士事務所 事業主である先生のご家族の社会保険のほか、クリニックで働く従業員の給料の相談、社会保険、雇用保険等の手続きを支援します。

(5)金融機関 M&Aで必要となる資金需要に対して融資を行います。また、特に売り手の情報を持っています。

(6)不動産会社 クリニックのM&Aで不動産を含む場合、売買や賃貸の仲介を行います。

(7)行政書士 医療機関の開設、廃止にかかる公的機関への届出書類の作成、提出のサポートを行います。

(8)医療関係業者(医薬品卸業者、医療機器販売業者等) 医療機器や医薬品など、開業のために必要な物品の調達支援を行います。

(9)保険会社 借り入れや、ライフプランに合わせた保険契約の見直しのほか、クリニックの火災保険、医療機器・動産にかかる動産保険、休業補償などをサポートします。

◇サポート内容が広範囲でナイーブ

クリニックM&Aでは、「医療機関」という、さまざまな行政法規が入り組んだ、特殊性の高い領域を扱うため、非常に高い専門性が求められます。

また、サポートする内容も広範囲、かつナイーブであることが多く、一般企業のM&Aよりも多数の専門家がチームとして漏れなく取り組む必要があります。

たった一つのミスや不備でM&Aが失敗してしまうこともあります。

M&Aで失敗しないためには、医療特有の手続きに精通したアドバイザーの下、M&Aの業務全体をチームで行うことが肝要です。

それでは、クリニックM&Aを依頼するのにふさわしいアドバイザーの条件とは何なのか。最低限必要となる五つの条件をリストアップします。

条件1 M&Aを専門的に業務として行っている

M&Aは、単なる後継者探しではありません。クリニックの未来を決める経営戦略の一つです。だからこそ、積極的な提案がされなければなりません。

そのためには、M&Aを数多く手掛けた経験と豊富なノウハウが必要です。クリニックM&Aのポイントを押さえつつ、クリニックにとって、院長やご家族にとって、一番良いM&Aとは何かを考えて、ベストな提案ができるアドバイザーが理想です。

条件2 信頼関係を築ける

M&Aでは、クリニックや院長に関する情報を細部までアドバイザーに預けることになります。秘密保持が徹底していることは絶対条件です。

それに加えて、院長のご家族など、背景部分にまで配慮して、真摯に相談に乗ってくれる相手を探します。

また、M&A専門をうたった業者でも、専門性の名の下に、不透明な報酬を請求されることがあります。報酬面でも誠実であるかどうかを見てください。相場が分からない場合は、セカンドオピニオンも考えます。

条件3 的確なスキームや価格を提示できる

専門知識やノウハウを駆使して、正しいスキームや価格を見極め、提示できるかどうかを見ます。提示された内容が理解できないときや、納得いかないときは、きちんと分かるまで説明を求めてください。

条件4 クリニックの価値を高める提案ができる

クリニックのM&Aに際して、クリニックの価値を高める磨き方を指南してくれるかどうかをチェックします。

また、譲渡を決めた後も気を抜くことなく、M&Aの契約直前まで収入や利益が増加する方策を提案してくれるかどうかも大事です。

直前の業績の悪化はM&Aの交渉を不利にするばかりか、M&A後、相手方との良い関係を維持する妨げとなります。

条件5 医療業界に精通している

医療業界の動向を敏感に捉え、M&Aのベストタイミングを見極める目を持っていることが重要です。

医療業界に精通し、ネットワークを広く持つアドバイザーのところには、有意義な情報が多く集まってきますから、M&Aのタイミングの見極めなどの精度は高くなります。

承継するクリニックの業界位置、特異性、医療業界独特のルールに従って、クリニックの価値を正しく判断し、より良い承継先とマッチングさせ、後々、問題が起こらないように対策を練りながらM&Aを進めてもらえるアドバイザーが良いでしょう。

今回ご紹介した「五つの条件」を参考にして、医療業界に精通したM&Aの最初から最後まで、そしてM&A後のフォローまでもシームレスに引き受けられる「ワンストップ」のサービスを提供できる心強いアドバイザーを見つけて、ぜひ、クリニックのM&Aを成功させ、ハッピーリタイアメントをしていただきたいと思います。

私どもが何かお役に立てれば幸いです。関心のある方はネットで「MARKコンサルタンツM&Aセンター」を検索の上、ホームページの問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

岡本 雄三(おかもと・ゆうぞう)
岡本雄三税理士事務所代表。株式会社MARKコンサルタンツ代表。税理士、行政書士、宅地建物取引士、M&Aシニアエキスパート、経済産業省認定経営革新等支援機関。
1967年生まれ。91年早稲田大学商学部卒業。98年岡本雄三税理士事務所開設。2000年公益社団法人日本医業経営コンサルタント登録。個人医院の開業、医療法人の設立、税務など、医業コンサルティング業務のほか、一般法人の税務、事業承継、M&A支援、資産税にかかわるコンサルティング業務を手掛ける。「後継ぎがいない会社を圧倒的な高値で売る方法」「開業医のためのクリニックM&A」など著書多数。