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 第1回 後継ぎがいないからと諦めていませんか「開業医のためのM&Aクリニック」岡本雄三税理士事務所・MARKコンサルタンツ代表 岡本雄三

 1998年に会計事務所を創業し、一般法人等の税務と併せて、医業コンサルティング業務を行ってきました。5年ほど前から、診療所の事業承継についてのご相談を受けることが多くなり、2015年9月にこれまでの業務支援の内容を整理するため、幻冬舎から「開業医のためのクリニックM&A」を出版しました。すると、日頃業務を行っている愛知、三重、岐阜、静岡の各県ばかりか、全国から反響があり、この数年は多くの診療所、病院、介護事業所、薬局のM&Aのご相談を受けています。

◇「クリニックM&A」に大きな反響

出版以来、「この本を探していたのですよ!」と、電話やメールによる問い合わせが毎月何件も来ます。これまで一人医師医療法人や、個人の診療所の事業承継の分野で、M&Aにフォーカスした書籍は皆無でした。

最近はM&Aを支援する会社がたくさん登場していますが、診療所の事業承継を専門に業務として取り扱う業者もほとんどありませんでした。その意味ではこの分野の先駆けと言えます。

この連載では「開業医のためのクリニックM&A」について、私が取り組んできた事例を、なるべく具体的にご紹介していきます。

最近、サステナビリティ(持続可能性)という言葉をよく耳にします。ビジネスの分野でも変化の激しい環境の下で、いかに継続的に事業を維持・発展させていくか、という意味で一般的に使われますが、開業医のサステナビリティの難しさは一般企業以上かもしれません。

◇厳しさ増す開業医の経営環境

第1回は、開業医のサステナビリティを困難にしている現状について説明します。

今、日本の開業医はかつてない苦境に立たされています。労働人口の減少、人口の4人に1人が高齢者という超高齢社会を迎えた日本では年々、社会保障費が増加を続けています。中でも、医療費は年間40兆円を超える勢いで、診療報酬のマイナス改定、薬価差益の引き下げなど、さまざまな医療費圧縮策が講じられています。これらの策が、開業医の経営に大きなダメージを与えるのは言うまでもないことです。

一方で、労務管理も悩みの種です。看護師は慢性的に不足しており、求人を出しても半年間、反応がないということはよくある話です。年収の20%から35%という高額な紹介手数料を仲介業者に支払い、採用しても、半年、1年で退職してしまうことが多く、募集広告料や紹介手数料の固定費化がクリニックの経営を圧迫しています。

大学入試センター試験に臨む受験生ら(写真はイメージです)

看護師不足から点滴や注射など看護師の業務までも開業医がこなさざるを得ないなど、開業医の労働とストレスは、年々過重なものになっています。その中でも、家族経営の高齢の開業医にとって、事業の継続を脅かす最大の問題が「クリニックの後継ぎ問題」です。

 ◇クリニック後継者問題は深刻

第一線を退くことを決断しても、望む通りの承継ができるクリニックはほんの一握りです。承継者がなく、仕方なく、ずるずると高齢になるまで続けてしまっているケースも、多く見られます。帝国データバンクの調査では、無床診療所の9割、有床診療所の8割が後継者不在となっています。今、中小企業の後継者不足による廃業の増加が大きな社会問題となっていますが、小規模なクリニックの後継者問題はさらに深刻です。

クリニックの承継が一般企業の承継よりも困難なのは当たり前です。承継相手が「医師免許」を持っていなければならないためです。最近、医学部不正入試問題が世の中を騒がせていますが、年々、医師免許の取得は難しくなっています。

国公立大学の医学部志願者は逓減傾向にあります。これに対し、私立大学は臨時定員増や新設によって医学部の募集枠が広がったこともあり、ここ10年余りで75%も増えているという調査もあります。

「医師」という職業の高所得や安定性を求めて、従来医師を目指していなかった人たちが医学部を目指す傾向もあります。中小企業の後継者として育てられた子供が、親の会社を承継せず、医学部を受験する話をよく耳にします。

 ◇環境変化の一因は医学部人気

学費が以前に比べて安くなったことも進学を後押ししているようです。私立大学医学部の中でも、最も安い大学は2017年に新設された国際医療福祉大で、学費は6年間で1850万円となっています。

それらを反映して私立大学医学部入試の偏差値は、この30年で大学によっては20ポイントほど上がっており、かつ大学間の偏差値にあまり差がなくなってきています。これまで医師は世襲が多い傾向にありましたが、最近は医師の子だからといって、簡単には医学部に進めないのです。

一方、子供や親族に医師はいても、クリニックを継がないことによる後継者問題もあります。身内がクリニック経営で苦労する姿を間近で見ていると、開業医に夢や希望が描けず、親のように苦労したくないと敬遠するケースがあります。

あるいは、地方から都会の医学部に進学した後、最先端医療の現場である都会の病院で働き、都会での生活基盤ができているため、田舎に戻ってまで親のクリニックを継承することをちゅうちょするケースも見受けられます。こうした子供が現実に増えています。

◇もう一つの選択肢がM&A

もう一つのパターンとして、子供が医師として一人前になるまでに、親が高齢になり、承継のタイミングまで待てず、結局、子供に承継できずに廃業を余儀なくされるケースが見受けられます。

しかし、後継者がいないから、また、経営に疲れたからといって、クリニックを閉じなくてもよい方法があります。これまで必死に守ってきたクリニックを閉めてしまうより、大切に続けてくれる誰かに引き継いでもらうM&Aという選択肢です。

一般の中堅・中小企業ではM&Aによる事業の承継が珍しくなくなってきており、世間の認知度も高くなっています。それに比べると、医療業界、ましてや診療所のM&Aは、まだあまり一般化していません。自分のクリニックがM&Aの対象になることを知らずに、閉院しか手がないと思っている開業医が多いのが実情です。

 ◇成功事例は次回以降に

あるいは、M&Aの対象になることは知っていても、いざとなると「手続きが面倒ではないか」とか、「譲渡する相手など簡単に見つからないだろう」と思って閉院を選ぶ開業医もいることでしょう。

クリニックのM&Aについては、経験のあるしっかりとした専門家に任せれば、思っているほど相手探しや手続きなども面倒ではありません。想像以上にうまくクリニックを譲渡して、ハッピーリタイアをした開業医がたくさんいます。

次回以降、クリニックM&Aの具体的な手続きの流れ、クリニックM&Aを成功に導く六つのポイント、M&A成功事例に見る開業医のハッピーリタイア等々について解説していきます。

 岡本 雄三(おかもと・ゆうぞう)

岡本雄三税理士事務所代表。株式会社MARKコンサルタンツ代表。税理士、行政書士、宅地建物取引士、M&Aシニアエキスパート、経済産業省認定経営革新等支援機関。
1967年生まれ。91年早稲田大学商学部卒業。98年岡本雄三税理士事務所開設。2000年公益社団法人日本医業経営コンサルタント登録。個人医院の開業、医療法人の設立、税務など、医業コンサルティング業務のほか、一般法人の税務、事業承継、M&A支援、資産税にかかわるコンサルティング業務を手掛ける。「後継ぎがいない会社を圧倒的な高値で売る方法」「開業医のためのクリニックM&A」など著書多数。